基調講演「脳科学からみた芸術と倫理」2

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2 幼児脳神経回路の環境から造られる側面

 さらに遺伝子の次には、脳神経系が発達したわけですが、この脳の 視点から見ると、また遺伝とはかなり違ってきます。たとえば、赤ちゃ んのネコを、このような縦縞の中で育てます(図3)。しばらくすると、 鉛筆を縦にして目の前で振るとじゃれてきますが、子ネコは鉛筆を横 にして振ると全く無視します。無視しているというより見えていませ ん、こういうことが起こります。

 それは、神経科学でも明確になって おりまして、最初に基礎実験を行ったのは、ヒューベル、ウィーセル という人たちで、ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。ネコの 視覚を司る、この1mmほどの厚さの大脳皮質というところです。

 そこは、 線の傾きに対応します。横線を処理するのは黄色で色付けした領域、 縦線は青に色づけした領域に通常は対応しています。縦線の中で育つ と縦線処理の領域(青色)ばかりが全部に広がってしまって、この黄 色に色付けした横線を識別する領域がなくなってしまいます。これは 一生続きます。

 このネコの視覚野というのは、人間とほとんど同じ構造ですから、 人間も全く同じことが起こると考えられます。このようなことは細胞 レベルでも研究するのですが、これは私どもの研究室で実際に培養し たものです。

 2つの神経の細胞をこうしておきますと、間にどんどん 千手観音のように手を出しまして、お互いに神経回路網を作ります。 このような神経回路網は、遺伝子の情報によって大雑把には作られま すが、外部から刺激が入ってこないと、そのようなものは環境に存在 しない、そのような情報システムを作る必要がないということで、脳は勝手にどんどんそれを溶かしてしまい、無くなってしまいます。

 そして、その場所に最適な脳を作りこんでいきます。これが赤ちゃんにも、とても大事なことです。

 例えば、小さい時に眼帯を片目にかけると、弱視になってしまうということは、今では常識になっています。

 眼科のお医者様でも赤ちゃんを手術する時には、片目を閉じるのではなく両目をふさぐという形で、バランスを取るということをしています。

 今お話したようなことが、人間でも起こるということがはっきりしております。

 ただ、こういう臨界期に近いものは、感覚など低次脳機能に特有なことでありまして、もう少し高次なものになりますと、必ずしもこのような臨界期が厳しく決まっているということではありません。

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